日本透析医学会の集会の一環として、重い腎臓病の患者が受ける人工透析について、終末期の医療のあり方を考える講演会が大阪市内で開かれた。講師は、透析を受けていた夫を看取った経験があり、その体験をもとにした著書を出しているノンフィクション作家の堀川惠子さん。
堀川さんの夫は腎臓の難病のため38歳で透析を始め、60歳で亡くなるまで、20年以上その生活を続けていた。そして、終末期は治療による強い痛みに苦しんでいたことなど、当時の闘病の様子を説明。その間、堀川さんは痛みを和らげる「緩和ケア」を受けられる病棟に夫を入れてほしいと要望したものの、がん患者ではないことを理由に断られた経験があったことを明かした。
そのため、当時の日々を「夫にとっては生きるために受ける透析が、透析を受けるために生きているようだった」と述懐する。そこでたどり着いたのが透析患者にも終末期医療としての「緩和ケア」の必要性だ。
堀川さんは、「当時の夫には終末期の着地点が全く用意されず、自分らしい命を全うすることは極めて困難だった」と語り、国内に34万人余りに上るとされる透析患者の緩和ケアの充実の必要性を訴えている。