私説 小倉百人一首 No.41 壬生忠見

壬生忠見
※壬生忠岑の子。

恋すてふ我が名はまだき立ちにけり
       ひと知れずこそ思ひそめしか

【歌の背景】忍ぶ恋の歌。恋するものは、恋の思いを人には知られたくないものだ。密かにあの人を思い染めていたのに、もう私が恋をしているという噂がぱっと広がってしまった-と嘆いている。天皇臨席の歌合で平兼盛の「忍ぶれど色に出でにけりわが恋は物や思ふと人の問ふまで」と競った秀歌。

【歌 意】あの人を恋しているという私の噂は、もう世間に広がってしまった。まだ思う相手の人も気付かぬほど思い染めたばかりの、密かな恋だったのに。

【作者のプロフィル】壬生忠岑の子。幼名多々といい、後に忠美と改め、また忠見と改めた。醍醐天皇の時、蔵人所に召され、また御厨子所に出仕えし、天徳2年(958)摂津大目に任じられた。「古今集」撰者の一人。