増え続ける高齢要介護者にとって、終の住処(ついのすみか)の一翼を担う施設として見込まれている住宅型有料老人ホームの一部に潜む問題が徐々に深刻化しつつある。介護現場や介護事業への理解が浅い・低い異業種からの新規参入事業者の中に、事業見通しの甘さから経営が破綻、廃業に追い込まれるケースが相次いでいるからだ。その結果、やっとの思いで、いわば終の住処として入居した利用者は、何の前触れもなく、ある日突然閉鎖に伴って退去させられるケースも少なくないという。 NHKなどの調べによると、住宅型有料老人ホームはこの7年間3倍に増え、全国に現在9,000以上の施設がある。しかし、2018年で廃業が355件に上った。同ホームは基本として入居者に個室と食事を提供する。要介護者への介護サービスは外部の事業者を利用する。様々な条件や制約がある特別養護老人ホーム(特養)などと異なり、自治体に届け出さえすれば設立できるため、通常業種の感覚で事業を立ち上げる人が少なくない。 ところが、高齢要介護者の症状は流動的でいつ、どのような状況で症状が進行、要介護度が高くなり、重度化していくか予測がつかない。例えば、そんなリスクを負っていることは到底織り込んでいないというわけだ。そうした不測の事態が重なると、ほかの業種のように容易に対症療法がない。そこでギブアップせざるを得なくなるのだ。いずれにしても、そのしわ寄せをもろに受けるのが入居者で、身寄りのない単身高齢者も少なくないという。