私説 小倉百人一首 No.51 藤原実方朝臣

藤原実方朝臣

かくとだにえやはいぶきのさしもぐさ
       さしも知らじな燃ゆる思ひを

【歌の背景】古来「伊吹山のさしもぐさ」を「恋の思い」に例えて歌にしたものは多く、この歌もその一つ。

【歌 意】私があなたにこんなにも恋い焦がれているとだけでも、打ち明けることができればいいのに、どうして言えましょう(言えません)。だから伊吹山のさしも草の艾(もぐさ)火のように熱く燃える私のこの思いを、あなたはご存知ないでしょうね。  
【作者のプロフィル】貞信公左大臣忠平の曾孫、侍従定時の子。母は左大臣源雅信のむすめ。叔父済時の養子となり、一条天皇に仕え、左近衛中将にまでなった。才気ある歌人として知られたが、宮中で藤原行成と争って粗暴な振る舞いがあり、天皇の怒りに触れて陸奥守におとされた。任地でも乱暴がもとで、長徳4年(998)40歳前後で神罰に当たって落馬して死んだという。