私説 小倉百人一首 No.44 中納言朝忠

中納言朝忠
※藤原朝忠、藤原定方の二男。

逢ふことの絶えてしなくばなかなかに
       人をも身をも恨みざらまし

【歌の背景】恋しく思う相手に逢うばっかりに、かえってつらくなる恋の悩みに、嘆きもだえる気持ちを歌ったもの。

【歌 意】恋しいあの人と逢うということが全くなかったなら、こんなに相手の冷たさを恨んだり、つれなくされる自分の身を嘆くようなこともないのに、たまに逢うばっかりに相手の冷たさを恨みたくなり、自分もつらいことだ。

【作者のプロフィル】三条右大臣藤原定方の五男。母は中納言山蔭のむすめ。延喜9年(909)に生まれた。天暦6年に参議、応和3年に従三位中納言に任ぜられ、土御門中納言と呼ばれた。和漢の書を広く読み、笙の笛にもたくみだった。晩年は中風となり、康保3年(966)57歳で没。