私説 小倉百人一首 No.45 謙徳公

謙徳公
※一条摂政藤原伊尹(これただ)のおくり名。

あはれともいふべき人はおもほえで
         身のいたづらになりぬべきかな

【歌の背景】恋人だった女が、冷たくなり、ついに逢ってくれなくなった。その傷心の気持ちを歌ったもの。百人一首には男の不実をなじり恨む女の歌は多いが、男がこれほど気弱に恋の悲しみを歌っているのは珍しい。

【歌 意】私を「かわいそうに」と悲しんでくれる人があるとは思われないので、私はこの遂げられぬ恋の悩みのために、きっと虚しく死んでしまうことだろうなあ。

【作者のプロフィル】謙徳公は右大臣藤原師輔の長男、一条摂政藤原伊尹のおくり名。母は武蔵守藤原経邦のむすめ。才知があり容貌も美しく、和歌が上手だったので、村上天皇の天慶5年に和歌所の別当となった。天禄元年右大臣となり、同年太政大臣正二位に進んだ。翌3年(972)、49歳で没