私説 小倉百人一首 No.84 藤原清輔朝臣

藤原清輔朝臣

ながらへばまたこのごろやしのばれむ
       憂しと見し世ぞ今は恋しき

【歌の背景】三条右大臣(藤原実行)が中将から昇進しないで嘆いているのを慰めた歌。 
 
【歌 意】生き長らえていたならば、今の苦悩が懐かしく思い出されるのではないでしょうか。かつてつらいと思っていた昔の日々も、今思い返すと懐かしく思えるのですから。

【作者のプロフィル】藤原顕輔の子。太皇太后大進兼長門守になり、高倉天皇の治承元年(1177)74歳で没。俊成ら二条家の歌風に対抗して、六条家の「古風」を守った。六条家は歌よりも学問の家柄だ。「万葉集」はじめ勅撰集を研究した。歌人というより歌学者として優れ、「奥義抄」「和歌初学抄」「袋草紙」などの著書がある。