私説 小倉百人一首 No.27 中納言兼輔

中納言兼輔
※藤原兼輔。

みかの原湧きてながるるいづみ川
       いつ見きとて恋しかるらむ

【歌の背景】みかの原は京都府相楽郡加茂町にあり、ダム建設以前は水量豊かな大河だった木津川を南に、北、東、西の三方を山に囲まれた要害の地で、かつて元明天皇の甕原離宮、聖武天皇の恭仁京があった、いわば古京の地。「湧きてながるる」から「出づ水」であって、それに地名(今の木津川)を掛けている。

【歌 意】かつてなんぴとかが甕をいくつも埋めた。そのおびただしい甕の口が泉となって水があふれるという甕の原。その湧き出て流れる泉川のように、いったいいつ見たからあの人がこんなに恋しいのだろうか。まだあの人とは会ったことはないのに。

【作者のプロフィル】勧修寺家の先祖良門の孫で、右中将利基の子。加茂川の堤の下の下粟田に住んでいたので堤中納言といわれた。寛平9年7月昇殿し、同10年正月讃岐掾に任ぜられ、延喜5年正月、従五位下、延長5年正月、従三位中納言、同8年12月、右衛門督を兼ね、承平3年(933)2月、57歳で没。