私説 小倉百人一首 No.20 元良親王

元良親王

わびぬれば今はた同じ難波なる
       みをつくしても逢わむとぞ思ふ

【歌の背景】元良親王が不倫の恋人との秘め事が露見して問題になったとき、逢うこともままならない侘しい心情を不倫相手の京極御息所に送った激情の歌。京極御息所とは藤原時平のむすめ、褒子。

【歌意】こうして心が晴れず寂しくつらい思いをしているのだから、今はもう逢わないでこうしているのも、逢って世事の煩わしさに苦しむのも同じことだ。だから、難波の海の澪標(みおつくし)のように、たとえこの身を滅ぼすことになっても、あなたにお逢いしたいと思う。

【作者のプロフィル】陽成天皇の第一皇子。母は主殿頭藤原遠長のむすめ。三品・兵部卿。和歌に優れ、抒情歌を多く詠まれた。また、非常に色好みな性格で、美しいと風聞のある女性には必ず言い寄られた。天慶6年(943)54歳でなくなられた。