私説 小倉百人一首 No.93 鎌倉右大臣

鎌倉右大臣
※源実朝。鎌倉幕府第三代将軍。

世の中は常にもがもな渚こぐ
       あまの小舟の綱手かなしも

【歌の背景】漁夫の小船の綱手に興味を感じて詠んだものだが、実はこの世の無常を感じながら人生の永遠を願っている。しかし、やがて迎える悲劇的な死と重ね合わせてみると、悲痛な思いを感じさせる一首。

【歌意】世の中はいつも変わらないものであってほしい(死なないでいたいなあ)。そうすれば、いつでもこの浜辺に来て波打ち際を漕ぐあの漁夫の小船の引き綱が見られる。あの小船はなんと興味深い眺めだろう。

【作者のプロフィル】源実朝。頼朝の子。母は北条時政のむすめ政子。建久3年(1192)生まれ。兄頼家に次いで建仁3年(1203)12歳のとき鎌倉幕府第三代将軍となった。27歳で右大臣。承久元年(1219)甥の公暁に暗殺された。享年28歳。その短い生涯にもかかわらず、優れた歌を残している。当時の歌調に染まらず、万葉的な歌風が特徴。